☆★このページでは、小説家志望必読の書籍『エンタメ小説家の失敗学 「売れなければ終わり」の修羅の道』の内容とおすすめポイントをまとめています★☆
「面白かった!」と言ったら、著者に対して失礼かもしれない。
そんな本を読みました。
タイトルは『エンタメ小説家の失敗学 「売れなければ終わり」の修羅の道』。
『エンタメ小説家の失敗学』は、ガチのプロ小説家である平山瑞穂氏が、自身の作家人生における「失敗」と、その教訓を綴ったノンフィクションです。
小説家志望にとって震え上がるべき現実と教えがそこにあったので、特に小説家を志す方におすすめしたく、ご紹介します!
出版業界に興味のある方もぜひ!
『エンタメ小説家の失敗学 「売れなければ終わり」の修羅の道』は、こんな本
『エンタメ小説家の失敗学』は、主に小説家を志す人へ向けたアドバイス本です。
「自分はこう失敗した」「だからこういうことに気をつけたらいいよ!」という、ありがたい経験談が詰まっています。
私自身、こういったガチのプロ小説家による「失敗」談は、今までに読んだことがなかったので、衝撃を受けました。
さて、気になるその内容を大まかに記すと、以下のとおりです。
- 著者の13年間の会社員×新人賞応募時代のこと
- 本来の作風であるところの「純文学」の新人賞では結果が出なかったこと
- エンタメ系新人賞へ方向転換を図り、見事受賞したこと
- デビュー後のジャンル迷走(書きたいものと期待されるものの乖離)
- 「この作家は〇〇な小説を書く」と認知されること(作風)の重要性
- 作品の映像化について
- 編集者との微妙な関係
- 編集者から絶賛されたからといって読者にも「ウケる」とは限らないこと
- 出版社から「この作家の本は売れない」と判断されてしまったらどうなるか
など
上記のような内容で、作品を明記しつつ、個別具体的に語っているのが印象的でした。
平山 瑞穂氏の作品例えば、
この作品については、こういう経緯で書き、出版に際してこのように改稿した
作品がヒットしたけれど、(予想外だったので)複雑な心情を抱いた
ヒットした(あるいはしなかった)要因は、これこれこういうことが考えられる(が、本当のところは良く分からない)
もっとこうすれば良かったかもしれない
などなど……。
あまりにもリアルな経験と後悔が綴られていて、ドキドキしながら読みました。
正直な話、小説家を志している方は、「デビューさえできれば、後はなんとかなる」と信じていませんか?
ええ、私もです。
しかし『エンタメ小説家の失敗学 「売れなければ終わり」の修羅の道』には、そんな漠然とした希望を打ち砕く現実が詰まっていました!
ただし、この本の主旨は、小説家志望を絶望させることではありません。
先人の経験から学び、同じ「失敗」を繰り返さないようにするための教科書なのです。
怖いけど有用! 小説家志望への重要な教訓2つ
それでは『エンタメ小説家の失敗学 「売れなければ終わり」の修羅の道』という本を読む中で、特に震え上がった「失敗」について、2つピックアップしてご紹介します。
ホラーポイント①作風や作家としてのポジションを確立できないとヤバい?
『エンタメ小説家の失敗学』の著者である平山瑞穂氏のデビュー作は、第16回 日本ファンタジーノベル大賞を受賞した『ラス・マンチャス通信』です。
『ラス・マンチャス通信』のストーリー概要は以下の通り。
少年時代の終わりの日、僕は姉を犯そうとする「アレ」を撲殺した。
https://www.kadokawa.co.jp/product/200805000075/
執着と断絶を繰り返す異形の家族のサーガを既存の枠組みを踏み越え、ガルシア・マルケスにも擬えられるマジックリアリズム的手法で描く壮大な物語。
このように不条理で難解な受賞作で強烈なインパクトを残した著者でしたが、その後に出版した作品は青春ファンタジーや自身の病気に関する半自伝的小説でした。
さまざまな事情があったようですが、結果として、デビュー作の作風とは全く異なった作品を続けて発表したということです。
著者いわく、これは戦略的に「失敗」だったようです。
いろんなジャンルを書ける方がすごくない!?と思うのですが
なぜなら、早い段階で「この作家はこういう小説を書く人である」と認知されることで、固定の読者がついたり、(おそらくは)次の仕事につながったりするから。
確かに、デビュー作の作風が好きだった読者は、
2作目以降で「思ってたんと違う……」ってなっちゃうかも?
『エンタメ小説家の失敗学 「売れなければ終わり」の修羅の道』では、こういった「戦略的失敗」によってじわじわと苦境へ追い込まれてゆく様が、生々しく記されています。
ホラーポイント②「編集者受け」を妄信してはならない?
また、この本のみどころの一つが、映画やドラマでしか見たことがない「編集者と作家との関係」について述べられているところです。
編集者との信頼関係、出版社との力関係や義理(と不義理)など、
興味深く読みました!
そんな中で、「小説内の登場人物の描き方について編集者は絶賛してくれたが、読者が想定外の反応を示したので、戸惑った」というエピソードがありました。
問題となったのは、『大人になりきれない』PHP研究所(改題後:『夜明け前と彼女は知らない』)という小説です。
著者および編集者は、ちょっと「イタい」「大人になりきれていないような」登場人物たちをシニカルに描くことで、「あぁ、こういう人っているよね」という笑いと共感を得られると考えていたようです。
しかし予想に反し、「(自分が笑われているような気がして)傷ついた」「不快だった」という読者の感想が目立つ結果に。
この読者と著者のすれ違いエピソードには、ゾッとするとともに、非常に考えさせられました。
私もさっそく『大人になりきれない』を読んでみましたが、
確かに(これ、私自身も笑われる側の人間では……?)と思いました
とはいえ、時には読者の反応を予測しきれないこともあるだろう、という気がします。
どちらの感じ方が正しいというものでもありませんからね。
作家志望としてはむしろ、「著者が事前に読者の受け止め方を予想できていたとしたら、それをどうやって内容に反映させたのか?」という技術的なところが気になります。
はたして、「イタい主人公たち」の描き方や結末に違いが出たのでしょうか。
平山 瑞穂氏の作品プロ小説家のガチ忠告に震え、学ぼう
以上が、小説家志望必読の書籍『エンタメ小説家の失敗学 「売れなければ終わり」の修羅の道』のご紹介でした。
最後に誤解なきよう申し上げますが、著者の実績を拝見すると、決して「小説家として失敗した」わけではないことが分かります。
2004年のデビュー以来、コンスタントに作品を発表し続けていますし、中には映画化した小説『忘れないと誓ったぼくがいた』もあります。
したがって『エンタメ小説家の失敗学』は、あくまでプロ小説家が作品をいくつも世に送り出す中で生じた後悔について綴った書であるわけです。
そういった意味でも、小説家を志す者にとって特に貴重&有用な一冊です!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
コメント