☆★このページでは、映画【残穢(ざんえ)】のネタバレあり考察と、原作小説との違いについてまとめています。未鑑賞/未読の方はご了承の上、お読みください★☆
ホラー映画が好きです。
そして【残穢ー住んではいけない部屋ー】は、数年おきに見返すほど好きなホラー映画です!
この記事では、そんな【残穢ー住んではいけない部屋ー】について、ネタバレありで考察と感想を記しています。
また、原作小説を読んだ上で、映画と小説との違いをまとめるとともに、スピンオフ作品『鬼談百景』との関係についても解説しています。
ぜひ最後までご覧ください!
ホラー映画【残穢(ざんえ)ー住んではいけない部屋ー】
引用:松竹/残穢【ざんえ】ー住んではいけない部屋ー
概要/スタッフ・出演俳優(敬称略)
原作:小野不由美/著 『残穢』新潮社(第26回山本周五郎賞受賞)
監督:中村義洋
脚本:鈴木謙一
- 竹内結子/「私」
- 橋本愛/「久保さん」
- 佐々木蔵之介/作家 平岡芳明
- 滝藤賢一/「私」の夫
- 坂口健太郎/心霊マニア 三澤徹夫
and more
ストーリー
小説家である「私」は、怪談雑誌で連載を行なっている。
読者から寄せられた実話怪談を、短編に書き起こして発表するのだ。
そんな「私」の元へ、大学生の女性「久保さん(仮名)」から、手紙が届く。
一人暮らしをする賃貸マンションの室内で、誰もいないはずの和室から「畳をほうきで掃くような音」が聞こえるのだという。
それも、「久保さん」が背中を向けている間だけ。
しかし奇妙なことに、当該マンションで事件や事故が起こったという記録は存在しなかった。
一方「私」は、以前収集した実話怪談の中に、今回の件と似た事例があったことを思い出す。
それは「畳を擦るような音が聞こえる」というもので、しかも「久保さん」の住むマンションの別の部屋で起こっていた。
「これらの怪異には、つながりがあるのか?」
「つながりがあるとして、原因はどこにあるのか?」
「私」と「久保さん」は真相に迫るべく調査を進めるが……。
映画【残穢ー住んではいけない部屋ー】ネタバレあり!【残穢ー住んではいけない部屋ー】の考察と感想

「いたずら電話」や「床下の猫」など謎各種の考察
映画【残穢ー住んではいけない部屋ー】はミステリー要素が強いホラーです。
集中して観ていないと、重要なポイントを見逃してしまうこともあります。
以下は、視聴後に「あれってどういうこと?」となりそうな点への解説と考察です。
- 「久保さん」の隣の部屋に住んでいた一家や「私」へかかってきたいたずら電話の主は誰?
→「カワハラ家の息子」 - 「根本家のおばあちゃん」が餌を与えていた「床下の猫」の正体は?
→過去に私宅監置されていた「吉兼友三郎」 - 「高野家の母」が怯えていた「湧いて出る赤ん坊たち」の正体は?
→「千葉嬰児殺人事件」の犯人が過去に遺棄した赤ん坊たち - ラストで編集者(たいして関わっていない)の元へ「炭鉱事故の犠牲者(と「吉兼友三郎?」)」の怪異が現れた理由は?
→「話しても祟られる、聞いても祟られる」から
あるいは穢れが積み重なり、徐々に強力になっているから? - 住職はなぜ「掛け軸は戦災で焼失した」と嘘をついた?
→あまりに危険な代物なので存在を隠しているから?
あるいは、すでに穢れに魅入られているから? - 「私」はどうなってしまうのか?
→無事ではいられない可能性が高い
では、詳しく解説してゆきます!
いたずら電話の正体
元町内会長の証言によると、マンションができる以前にあった家のひとつに住んでいた「カワハラ家」の息子は、いたずら電話をしたり、布団に火をつけてボヤ騒ぎを起こしたりしていました。
したがって、いたずら電話の怪異の正体は、この「カワハラ家の息子」であると考えられます。
また、ボヤ騒ぎを起こしていたことから、当時すでに「炭鉱事故の犠牲者」と後述の「吉兼友三郎」の影響下にあったようですね。
床下の猫の正体
精神を病み、私宅監置されていた「吉兼友三郎」です。
彼自身も、「炭鉱事故の犠牲者」の影響を受けてしまったようです。
湧いて出る赤ん坊の正体
千葉の嬰児殺人事件の犯人が過去に遺棄した赤ん坊たちです。
「高野家の母」は彼らの泣き声に悩まされ、結果として怪異の仲間入りをしてしまいました。
なお事件の犯人自身も、「炭鉱事故の犠牲者」および「吉兼友三郎」の影響を受けていたと考えられます。
ラストで「炭鉱事故の犠牲者」(と「吉兼友三郎?」)が編集者の元へ現れた理由
これは編集者のPC画面に表示された通り、「話しても祟られる、聞いても祟られる」ので、どれだけ深く関わったかは問題ではないということでしょう。
また、メタ的なことを言ってしまうと、このシーンを追加することで「この映画を観たあなたにも、穢れが憑ったかもしれませんよ」ということを演出したかったのだと思います。
一方、長年マンションに住んでいるのにほぼ影響を受けていない人と、住み始めてすぐに怪異に見舞われる人との違いは、なんでしょうか。
単に前者が鈍感なのか……もしかしたら、時間の経過とともに穢れが積み重なり、より強力になっている証拠かもしれません。
住職が「婦人図の掛け軸は焼失した」と嘘をついた理由
劇中で示されていないので想像で恐縮ですが、掛け軸があまりにも危険な代物なので、先代住職が存在を隠すことにしたのではないかと思われます。
怪談話を聞きつけてオカルトマニアや記者がやってきても、「焼失した」と伝えれば、それ以上深追いされませんからね。
あるいはエンドロール中の住職の表情を見るに、すでに穢れに魅入られているゆえに、奪われることを恐れて秘匿しているのかもしれません。
「私」はどうなってしまうのか?
新築した自宅廊下の照明の件くらいならば、単なる機器の不具合で済みます。
しかし実際に例のいたずら電話がかかってきてしまっているので、確実に穢れの影響を受けていると言えるでしょう。
こうなってくると、「私」の首の痛みに関しても気になってきますよね。
検査によってきちんと原因が分かったと述べられていますが、どうも「高野家の母」や「久保さんの部屋の前の住人」の亡くなり方を連想してしまいます。
ネタバレ感想〜最高の音響と残念なクライマックス〜
ここからは感想です!
推しポイントは「音」と良キャスティング!
まず、映画【残穢】を語るうえで重要なポイントは、「音」です。
宣伝用ポスターでも、俳優さんたちが手で耳を覆っていますよね。
作中の怪異は、主に音から始まるのです。
「畳を擦る音」「床下から聞こえる男の声」「赤ん坊の泣き声」……。
ホラー慣れしている私がしっかり身構えていても、思わず息を呑んでしまうような音の演出でした。
怖いのが苦手な方以外は、ヘッドホン推奨です!
また音以外にも、「赤ん坊が床から湧いて出る」という表現など、なんとも言えずゾッとする雰囲気が巧みに演出されています。
床下を這う男の映像は、深夜視聴厳禁級の恐ろしさ。
そして「実力派しかおらんのかい」と突っ込みたくなるほど、俳優さんたちが素晴らしかったです。
特に「高野家の母」役の俳優さんの表情と話し方は、本当に本当に怖かったですね。
エンドロールで住職が重大な嘘をついていたことが示されるのも、好きな場面です。
絵の中の姫にすっかり魅入られ、微笑んでいるように見える俳優さんの演技が光ります。
また、物語の締め方が味わい深いです。
調査をやめた後は、まるで怪異がおさまったかのような明るい雰囲気を醸しておきながら、実はなにも解決しておらず、全く安心できないところが。
ごく平和な日常の風景やハッピーなホームビデオを流しつつ、その中に怪異の存在を匂わせるという手法は、映像作品でないとできないことですよね。
唯一残念だったところ
【残穢ー住んではいけない部屋ー】は全編を通して雰囲気作りが巧みでしたが、ラストだけは残念な部分がありました。
それは、最後に怨霊たち(?)を続々と登場させてしまったこと。
まさに怪異の大放出。むしろ妖怪大戦争?
もちろん、物語を終えるために「最後のひと盛り上がり」を作る必要があったのは理解できます。
それに原作小説でも、怪異を「音や雰囲気で感じる」だけでなく実際に目撃した証言者たちがいて、姿も描写されています。
しかし映画全体が重厚なミステリー路線だったところを、クライマックスで突如「オバケが次々にコンニチハ」したので、なんだかチープな印象になってしまったのです。
そこで思い出したのは、あのジャパニーズホラーの金字塔【リング】。
【リング】では、クライマックスで満を持して「貞子」を見せる演出が、大成功していましたよね。
【残穢】のラストも類似した手法に思えますが、いったい、どこが良くなかったのでしょうか?
映像のクオリティの問題か、はたまたすでに使い古されてしまった展開だからか……。
ぜひ有識者のご意見を伺いたいものです。
映画【残穢】と原作小説『残穢』との違い

映画【残穢ー住んではいけない部屋ー】には原作小説があります。
小野不由美/著『残穢(新潮文庫)』です。
私も、もちろん読みました。
そして読後は、電気をつけたまま寝ました!

ホラーは大好きだけど、
怖いものは普通に怖いんですよね……
そんな原作小説と映画との違いを簡単にまとめると、以下の通りです。
- 「私」の仕事関係の人物が実名で登場する
- 「久保さん」は30代女性で、職業はライター
- 問題のマンションだけでなく、その隣の建売住宅群で起こった怪異も詳しく証言・説明されている
- 「高野家の娘」が、嫁ぎ先へ穢れを持ち込んでしまったらしき後日談がある
- 「実は住職が嘘をついていた」という展開はない
- 映画版ラストの「怒涛のオバケ☆ラッシュ」がない
(ただし、怪異の描写は証言の中に散りばめられている)
原作小説は、総じて話が複雑でノンフィクション色が濃いです。
そのためか、映画では細部をスリムアップして、物語として分かりやすい構成にしています。
上記以外にも細かな違いはありますが、主な筋と怪異の内容などは、ほぼ原作に忠実と言って良いと思います!
『残穢』をより深く味わうには、『鬼談百景(きだんひゃっけい)』もあわせてチェック!

ところで『残穢』の主人公である「私」は小説家で、一般から収集した怖い話を元に短編を執筆しています。
そしてとあるマンションで起こる怪奇現象の原因を探るため、過去の出来事を調べてゆきます。
そのうちに、かつて収集した怖い話のうちのいくつかが「つながっている」ことに気づくのです。
実は、これらの怖い話をまとめた短編集は、実在します。
それが
小野不由美/著『鬼談百景(角川文庫)』です。
そう、『残穢』は『鬼談百景』を通して、現実とリンクしているのです。
さらに『残穢』では、実在の作家が数人、実名で登場します。
これらを踏まえると、主人公である「私」=「著者:小野不由美さんご本人」であると考えられます。

小野不由美さんがそういう体(てい)で書いているのか、
はたまた本当に実話なのかはっきりと分からないところが、
またゾクゾクしますよね!
読者(観賞者)に対し、フィクションと現実の境を曖昧にさせる、あるいは境を越えさせようとする試みは、大変画期的です!
余談ですが、私は、とある場所で『鬼談百景』の中の「兄」というお話を朗読させてもらったことがあります。
ほんの見開き1ページのとても短い話ですが、最後の一行で最高にゾッとできるので、今でもお気に入りのお話です。
なお、短編集『鬼談百景』のうちのいくつかの話を映像化した作品もあります。
映像的な怖さで言えば、【残穢ー住んではいけない家ー】よりも、短編ドラマ集【鬼談百景】の方が、瞬発力が高いです。
テレビ番組の【ほん怖】や、昔の【奇跡体験 アンビリバボー】の恐怖特集などが好きだった方には、特におすすめです!
映像作品【鬼談百景】【残穢ー住んではいけない部屋ー】は現実侵食系ホラー!

以上が、ホラー映画【残穢(ざんえ)ー住んではいけない部屋ー】の考察&ネタバレ感想、原作小説との違い、そしてスピンオフ作品『鬼談百景』についての解説でした。
そもそもの原作小説が大変面白い作品であることを差し引いても、特に音響演出のセンスが突出した映画でした。
しかし一番怖いのは、「何年にもわたり、あらゆる手を尽くして怪談の真相を調べ続ける」という作家たちの執念……!

プロってすごい!
なお、大ヒット漫画/アニメ『呪術廻戦』で呪力という特殊能力の残り香として「残穢」というワードが出てきます。
おそらく、こちらの映画(小説)『残穢』が元ネタでしょう。
ちなみに、
アニメ【呪術廻戦】もAmazonプライムビデオで観られます。

『呪術廻戦』の推しは、ナナミンです!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
映画【残穢ー住んではいけない部屋ー】
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